並列で走るエージェントに作業台を、Claudette が端末の外側を埋める

要約

オープンソースのデスクトップアプリ。複数のエージェントをそれぞれのブランチ作業ツリーに送り、コンテキストの消費を測り、差分とエディタを同じ窓に残す。

おすすめ
ソフト名
Claudette
バージョン
0.28
料金
無料
オープンソース
オープンソース
OS
WindowsmacOSLinux
更新日時
2026-10-29 22:00

コマンドライン版のエージェントは強い。だがその画面は、流れていく文字が一画面あるだけだ。いくつもの作業を同時に進めたくなった瞬間、ターミナルが隘路になる。Claudette が埋めようとしているのは、机の上に空いたその作業台の場所だ。

コマンドラインのコーディングエージェントを使ったことのある人なら、たぶん同じ感覚を知っている。一度にひとつしか任せられないのだ。できないからではない。並行させたとたん、いくつもの出力が同じ画面を取り合い、どの行がどの仕事のものか分からなくなり、今回の変更がどのファイルに触れたのかも言い切れなくなる。仕事は直列に進み、時計だけが伸びていく。

Claudette はオープンソースのデスクトップアプリで、Claude Code のデスクトップの相棒だと名乗る。やることは具体的だ。ひとつの窓の中で、複数のエージェントを別々のブランチに送って同時に働かせ、しかもそれぞれがどれだけコンテキストを食っているかをいつでも見られる。

ひとつの作業場所、ひとつのブランチ、ひとつのエージェント

核になる仕組みは git のブランチ作業ツリーの上に載っている。リポジトリの下で作業場所を新しく作るたび、Claudette は新しいブランチに独立した作業ツリーを用意し、その中で専用のセッションを立ち上げる。

大事なのは「独立」の二文字だ。各エージェントは自分の作業ツリーの中のファイルしか見えず、他の作業場所からは完全に切り離されている。だから一路は新機能を作り、二路は不具合を直し、三路はテストを足す、ということが同じリポジトリの中で同時に進む。変更はそれぞれのブランチに落ち、途中で上書きし合うことはない。どれかが終わったら、いつもの流れで本線へ統合すればいい。

サイドバーはプロジェクトごとに作業場所を並べ、各路のエージェントの状態が一目で分かる

セッションには自分の寿命の状態がある。実行中、待機中、停止。一路を止めたいときは Escape を一回押せばよく、窓を閉じる必要も、プロセスを殺す必要もない。

コンテキストの消費を表に出す

並行で走らせるときにいちばん踏みやすい穴は、各路に残りの予算がどれだけあるか分からないことだ。Claudette はエージェントのストリーミング出力から使用量のイベントを読み、各ターンの上に区切りのあるコンテキスト計量バーを出す。入力、出力、キャッシュの三つに分けて表示する。

上限に近づいたら、会話の中から圧縮の指示を使える。タイムラインには圧縮の区切り印が残る。履歴は捨てられたのではなく折り畳まれただけで、あとから辿れる。単発のセッションだけでなく、作業場所ごとに使用量を集計し、ヒートマップ、順位、セッション履歴も見られる。これらの統計はすべて手元のデータベースファイルに収まり、クラウドへの中継は一切通らない。

何を変えたか、どこに書いたか、同じ窓の中で

エージェントが変更を出すと、確認の工程は省けない。内蔵の差分ビューアは並列と統合の二つの表示に対応し、計画やレビューの内容については Markdown と Mermaid の図も描く。差分はタブとして会話の横に並んで開くので、説明を読みながら、実際に何を変えたかを突き合わせられる。

差分ビューアの並列表示。何が変わったかがひと目で分かる

もう一段下がエディタだ。Monaco を内蔵し、型を意識した強調表示と言語サービスを備え、完全にオフラインで動く。分析のためにコードを外へ送る必要はない。エージェントごとに本物の端末も付き、分割表示や一般的なシェルに対応するので、会話から修正、コマンド実行まで、日常の動作はほぼこの窓から出ない。

内蔵の Monaco エディタ。作業場所の中でそのままファイルを開いて書き換えられる

長い仕事で効く設計がもうひとつある。チェックポイントと作業場所の分岐だ。セッションは前のターンまで戻せるし、チェックポイントから並行の複製を分けて別の実装筋を試せる。元の流れは影響を受けない。

セッションを別のマシンで開く

リポジトリが性能のよいマシンや常時稼働のサーバーにあるなら、遠隔の作業場所が使える。暗号化された WebSocket で相手のマシンに繋ぎ、そのリポジトリ、エージェント、端末を手元の画面にそのまま表示する。使ってみると、手元の作業場所と目立った違いはない。

転送は TLS で、手元のアプリは初回の接続時に相手サーバーの証明書指紋を固定し、以後は毎回照合する。証明書が変われば再確認を求められる。同じローカルネットワーク内のマシンは自動で見つかるので、接続情報を手入力する手間が省ける。画面のないマシン向けには、単体で動かせるサーバー側のプログラムも公開されている。

オープンソースで、手元優先で、資格情報には触らない

Claudette は MIT ライセンスで公開され、コード全体を誰でも読める。アカウントの仕組みはなく、開けばそのまま使えて登録の手順もない。遠隔測定も分析も障害報告もなく、中継サーバーは一切運用しないと公式が明言している。

資格情報の扱いには線が一本引かれている。モデルの提供元に対する認証を代行するのではなく、手元にすでに入れてサインイン済みの公式コマンドラインツールを起動し、そちらが設定済みの資格情報を使う。エージェントの子プロセスに購読のトークンは渡らない。Claudette が子プロセスの環境に継承されたトークンを自ら剥がすからだ。ただし例外がひとつ文書化されている。使用量パネルを開いたときだけ、購読の種類と上限を出すために手元の資格情報を読んでアカウントの使用量を問い合わせる。パネルを開かなければ、このコードの道は通らない。

それが何であり、何でないか

モデルは内蔵していない。既定の道は、手元にすでに入れてサインイン済みの公式コマンドラインのプログラムを動かすことなので、実際に働いているのは相変わらずその公式のエージェントだ。そのうえで、バックエンドを手元で動くモデルサービスや別の API の口に切り替えることもでき、必要とする人が自分のやり方を通せる。

独立したコミュニティのプロジェクトであり、モデルの提供元とは系列も、推奨も、スポンサーの関係もない。公式のコマンドラインツールを呼んでいるだけだ。並行で使う場合、公式は並行度を低めに保ち、既定の姿勢ではなく自分で意識して入れる使い方として扱うよう勧めている。利用量が多い場合に公式が示す正規の道は、API キーによる認証への切り替えだ。

macOS、Linux、Windows の三つに対応し、いずれもネイティブのビルドだ。配布の線は着実に進み、安定版と毎日のビルドの二つの経路が用意されている。

Claudette が埋めるのは、コマンドラインが空けたままにしている操作の層だ。ブランチ作業ツリーが並行するエージェントを引き離し、コンテキストの計量が使用量を表に出し、内蔵の差分表示とエディタが確認の工程をその場に留める。オープンソースで手元優先、資格情報を預からない。代わりに公式コマンドラインツールの外殻であることは変わらない。土台の能力を誰がどんな条件で供給するかは、上流が決める。リポジトリがひとつで、一度にひとつのことしか進めないなら、コマンドラインだけで足りる。分かれ道は、同時にいくつも抱えたときに現れる。

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対応OS: Windows macOS Linux