Rowboat 1.0.3、各自の手元に助手を置く

要約

Rowboat 1.0.3 はメールと会議を手元の Markdown 知識グラフへ煮詰め、成員それぞれが自分の助手を連れて同じ Space に入れるようにした。データは手元のディスクに残る。

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ソフト名
Rowboat
バージョン
1.0.3
オープンソース
オープンソース
OS
WindowsmacOSLinux
更新日時
2026-11-06 23:00
多くの AI 助手は文脈をクラウドに置き、チーム全員で 1 つのアカウントを共有する。Rowboat 1.0.3 はその逆を行く。各自が自分の機械の上で自分だけの助手を育て、本当に一緒に作業するときだけ、それを同じ部屋へ連れて行く。

Rowboat は macOS、Windows、Linux に対応するデスクトップアプリで、コードは Apache-2.0 で GitHub に公開され、TypeScript で書かれている。星の数はすでに 1 万 8000 を超えた。自称は「記憶を持つ AI の同僚」であり、その記憶は会話の記録ではない。自分で育っていく手元の知識グラフだ。

個人の側:仕事を Markdown のグラフへ煮詰める

土台の名前は Brain。Rowboat はメール、会議の文字起こし、Slack のメッセージ、助手との対話をすべて素の Markdown ノートへ煮詰め、ノート同士を二重のリンクで結び合わせる。人、会社、プロジェクト、話題がそれぞれグラフの節点になり、仕事が進むにつれて新しいつながりが自然に伸びていく。このディレクトリ構成は Obsidian の vault と互換で、手元のエディタで開き、名前を変え、間違って引いた関連を切り落とすことができる。

Brain のグラフ表示。節点は人、プロジェクト、組織、話題ごとのフォルダに分けて置かれる
Brain のグラフ表示。節点は人、プロジェクト、組織、話題ごとのフォルダに分けて置かれる

これは、質問のたびに文書を検索し直すというよくある作りとは別の賭けだ。検索は冷たい。どの対話も文脈をゼロから組み直す。グラフは温かい。先週この顧客に何を約束したか、この案件が誰のところで止まっているかは、すでに節点に書かれている。Rowboat はこれを、毎回やり直すのではなく記憶が複利で効く状態と呼ぶ。

ファイルはすべて手元のディスクに置かれ、独自形式もなく、特定の預け先に縛られることもない。控えも移行も、ディレクトリを 1 つ複製するだけで済む。上の関係図はまさにそこから来ている。100 を超えるノートが人、プロジェクト、組織、話題のフォルダに分けられ、どの節点を押しても元のノートへ飛べる。

メール、会議、そして勝手に動く仕事

日々の動きで最も変わるのはメールだ。内蔵のクライアントは受信箱を重要とそれ以外に分け、重要な側には返信の下書きを先に用意する。使うのはグラフに溜まったやり取りと約束だ。下書きを直してから送れば、その直し方を覚え、次はもっと自分の書き方に近づく。会議はもう 1 つの入口になる。録音は手元で行い、マイクとスピーカーの両方から同時に音を取る。会議にボットを送り込むことはしない。開催中はその場で文字起こしが出て、終われば行動項目付きの Markdown 要約が残り、関わる人、プロジェクト、話題の節点が同時に更新される。

これらの動作をクリック待ちにしないのが、背景で動く agent だ。新しいメールが来た、会議が終わったといった事象に結びつけてもよく、毎朝 8 時とか 1 時間ごとといった時間に結びつけてもよい。動き出せば、ウェブを検索し、内蔵ブラウザを操作し、すでにつないだ道具を呼び、必要ならコードも書く。下の画像のタスク一覧には、会議の内容から実装を動かすもの、1 時間ごとに情報を 1 巡集めるもの、毎朝前日の手がかりを整理するものが並び、どれにも前回の実行時刻と入切の切り替えが付いている。

背景の処理は事象か予定で動く。右側では 1 行の文で新しく作れる
背景の処理は事象か予定で動く。右側では 1 行の文で新しく作れる

さらに 2 層上に Code Mode と Apps がある。Code Mode は Claude Code や Codex を使って並列のコーディング agent を起動する。Rowboat はそれらを動かすために自前の ACP クライアントを書いた。そのおかげで、会議で決まった 1 つの判断が枝と見直せる変更になり、誰かに背景を説明し直す必要がなくなる。Apps は「見られるものが欲しい」をそのまま形にする。要望の一覧でも資金調達の進捗表でも copilot に言葉で伝えれば、手元で動く小さなウェブアプリをその場で組み立て、データは agent が供え続ける。下の機能要望の一覧は、メール、会議、Slack の要望をまとめて声の大きさ順に並べたもので、1 件開けば元がどのメール、どの会議だったかまで辿れる。

Apps は copilot にその場で小さな手元のアプリを作らせ、データは agent が更新し続ける
Apps は copilot にその場で小さな手元のアプリを作らせ、データは agent が更新し続ける

チームの側:Space とその背後の Harbor

1.0.3 が力を入れたのは共同作業の側だ。Space にはメッセージ、ホワイトボード、文書、プレゼンが置かれ、成員はそれぞれ自分の助手を連れて入る。助手は今の作業に必要な内容だけを読み、私的な素材は要約の形で共有の場へ持ち込み、ノート全体を流し込むことはしない。こうした共有の記録を支えるサーバは Harbor と呼ばれ、HTTP、WebSocket、MCP の 3 つの窓口を出す。だから Space は MCP サーバを 1 つ公開し、自分の agent をつなげられる。

1.0.3 の軸は Space にある。各メンバーが自分の助手を同じ部屋へ連れてくる
1.0.3 の軸は Space にある。各メンバーが自分の助手を同じ部屋へ連れてくる

Harbor は公式の預け先を使ってもよく、自分で立ててもよい。開発用の入口は既定で 4272 番ポートで、開発用の token が付く。手元の調整にだけ使うものだ。本番では Postgres、ドメイン、固定の OIDC issuer をそろえる必要がある。Space の履歴、ファイル、ホワイトボードは Harbor に入った時点で共有の記録になるので、アクセス制御、控え、削除、事象の監査も一緒に用意しなければならない。

モデルは自分で選ぶ。ただし手元優先はオフラインではない

モデルの層で Rowboat は特定の提供元に縛られない。完全に手元で済ませるなら Ollama や LM Studio で手元のモデルを動かす。自分の API key を入れて預けるモデルにつなぐこともでき、いつ切り替えてもデータの層は動かない。外部の道具は MCP と Composio からつなぎ、文字起こしは Deepgram、読み上げは ElevenLabs を使う。いずれも選べる設定だ。

見落としやすい境界が 1 つある。手元優先はオフラインで使えるという意味ではない。Brain は確かに Markdown として手元に残るが、選んだモデル、メールと予定表の接続、音声の処理、ウェブ検索、MCP の道具、Space はどれもネットに触れうる。プライバシーの約束が成り立つのは、何が外へ出るのかを自分が知っているときだけだ。

現実のいくつかの面

今つながるデータの出どころは Gmail、Google カレンダー、Granola、Fireflies、Slack に集中している。限界もはっきりしている。Outlook はまだ無く、IMAP にも対応しない。主な受信箱がこの組の外にある人には窮屈だ。

グラフそのものも、使えるようになるまでしばらく育てる必要がある。データ量が多ければ 1、2 週間は普通だ。初期は雑音が多く、要らない連絡先や手がかりの弱い実体が節点に混ざるので、手で刈り込むことになる。背景でのグラフ構築は token をよく食い、クラウドの窓口だけで回すと請求が静かに膨らむ。

現実的なのは、まず手元のモデルで下地の図を作り、本気で考えるときだけクラウドへ切り替える使い方だ。ライセンスはコードが Apache-2.0 で、自分で立てるのは無料。クラウドの購読は使用量に応じた段階に分かれ、重く使えばすぐ上限に届く。

Rowboat が向くのは、仕事のほとんどがメールと会議の中にあり、しかも複数の案件と顧客を同時に進めている人だ。値打ちは答えがどれだけ賢いかではなく、背景を何度も説明しなくて済むことにある。チームで一緒に作業する段になって、1.0.3 は少なくとも「各自が助手を連れて同じ部屋へ入る」ところまでをつないだ。

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対応OS: Windows macOS Linux