Quarto 1.11、コードと図と組版を 1 本の線につなぐ

要約

Quarto 1.11 は、コードと図と組版を Markdown の 1 本の線にまとめ、1 つの原稿から web ページ、PDF、Word、スライド、電子書籍を描き分ける。今回の更新では証明書の連鎖に関する危険も塞いだ。

おすすめ
ソフト名
Quarto
バージョン
1.11
料金
無料
オープンソース
オープンソース
OS
WindowsmacOSLinux
公式サイト
https://quarto.org/
更新日時
2026-11-06 23:00

文章とコードを 1 つのファイルへ

データの入った技術文書を書くときの流れは、たいていこうだ。手元のノートで図を作り、画像として書き出し、それをワープロへ貼って組む。データが変われば最初からやり直しになる。Quarto が外そうとしているのは、まさにこの運び直しだ。Posit が手入れをし、Pandoc の上に立ち、科学と技術のための公開できる仕組みだと名乗る。書き手が持つのは qmd という拡張子の素のテキスト 1 つで、語りの文章と実行できるコードの区切りが同じファイルに入る。描画のときはコードが先に走り、図と数値がその場で埋まり、最後に Pandoc が成品へ変える。

値打ちはクリックが数回減ることではない。結果の出どころがいつでも辿れることにある。文書のどの数値もどの図も、ファイル内のコードの一片と対応している。データを更新したら描き直せばよく、本文が 3 月の結論のまま図だけ 2 月版、という状態は起こらない。長く手入れを続ける報告や技術文書にとって、これは見た目の美しさより実用的だ。

原稿 1 つ、成品はいくつも

出力の形式は広い。HTML のページ、PDF、ワープロ文書、ePub の電子書籍、そして revealjs のスライドまで含み、複数の文書を web サイト、ブログ、書籍としてまとめることもできる。同じ原稿に複数の目標形式を同時に指定できるので、投影用と印刷用で別々の稿を抱えなくて済む。書くときは Pandoc の Markdown 方言を使い、数式、文献の引用、相互参照、図の並び、注記の枠、進んだ版面が文法の段階で支えられる。図の番号は内容の増減に合わせて自動で振り直されるので、長い文書で最も間違えやすい手作業の番号付けが要らなくなる。

コードの実行は言語に縛られない。Python、R、Julia、Observable JavaScript をそのままコードの区切りに書け、描画のときに必要な engine が選ばれる。Jupyter のノートもそのまま描ける。編集器にも指定はなく、VS Code、Positron、RStudio、JupyterLab のいずれも使え、目で見て書ける Markdown 編集器も用意される。素のテキストが好きな人は、任意の編集器とコマンド行でも同じように進められる。

Quarto が描き出した技術文書。図は本文の中にそのまま置かれる
Quarto が描き出した技術文書。図は本文の中にそのまま置かれる

1.11 が直したのは土台

Quarto 1.11 は 2026 年 11 月 2 日に出た。いつもの間隔より早いが、理由は安全のための更新だ。同梱の Deno 実行環境を 2.7.14 から 2.9.8 へ上げ、新しい版は破られたことのある eMudhra と emSign の証明書の連鎖を含む証明書を受け取らない。影響が出るのは公開と取得のときだ。quarto publish、quarto add、quarto use template といった命令、そして Quarto が動かす TypeScript のスクリプトは、いずれも HTTPS の要求を通る。古い版がこれらの証明書を信じていたことは、同じ網の中の攻撃者に site を騙る隙を与えていたことになる。修正は 1.10 の系列へ戻さないと明言されているので、手に入れる道は 1.11 だけだ。

代わりに機械の足切りが少し上がる。同梱の Deno 2.9.8 は macOS で 12 以上を求めるため、それより古い環境は先に上げる必要があり、そうしないと描画の engine と関係する形式が動かないことがある。

コマンド行から Quarto の企画を描画し、下見する
コマンド行から Quarto の企画を描画し、下見する

アクセシビリティは中身のある直し方

1.11 のもう半分はアクセシビリティに置かれ、しかも直っているのは実際に使われる場所だ。Bootstrap の主題を使う HTML 文書、web サイト、書籍、計器盤には本文へ飛ぶリンクが入り、鍵盤だけで動かすときに案内の全体を Tab で渡り歩かなくてよくなった。サイトの側面の区切りは鍵盤で動かせるボタンになる。スクロールできるコードの区切りと出力の領域は Safari でも焦点を得て動く。引用、脚注、相互参照、コードの注記の重なりは Esc で閉じる。見た目には二色の焦点の輪が加わり、強い対比を強制する設定でも焦点の居場所が見える。

図とスライドも手当てされている。Mermaid と Graphviz が作る図は fig-alt で指定した代替の文を採るようになり、HTML、revealjs、Word、Typst の出力で効く。代替の文は読み手が見る図の注と切り離されたままで、互いを押しのけない。スライドは通常の再生の見方で焦点を今の頁に残し、画面読み上げはまだ出ていない段階の内容を先に読まない。別のタブへ移って戻っても焦点は失われない。

Quarto の書籍企画の目次と、その描画結果
Quarto の書籍企画の目次と、その描画結果

Typst と Julia の 2 本の線にも追加

Typst で組む人にとっては、lof と lot の 2 つの選択肢で図と表の一覧を作れるようになった。一覧の見出しは文書の言語に従い、crossref で作り込める。proof、remark、solution の 3 種の区切りは素の文から定理の体裁へ上がり、印を付けた区切りは相互参照できる。定義の一覧の書き方も決まった。入れ子の箇条書きを持つ definition-list の入れ物を使う形で、これが次の大きな版でも引き継がれる文法になる。

Julia の engine には keep-ipynb の選択肢が加わり、実行済みのノートを原稿と一緒に保存できる。あわせて、ノートの実行が止まる不具合と、メタデータの変化が控えた cell の結果を無効にしない不具合も直した。共有のメタデータはまとめた値として Pandoc の雛形と Lua の濾過器へ渡るので、keywords のような受け継いだ一覧は文書自身の値と合わさり、文書内の一覧で丸ごと置き換えられることはない。

Quarto の文書の中の Julia のコードと図の出力
Quarto の文書の中の Julia のコードと図の出力

向く人、向かない人

心地よい範囲ははっきりしている。コードと結果と説明を一緒に書きたい人だ。データの分析報告、実験の記録、講義の配布物、技術の手引き、長く手入れする書籍は、どれも「結果は計算の過程まで辿れなければならない」という強い要求を持つ。原稿 1 つの模型はそこにまっすぐ応える。すでに RStudio や Jupyter を使っているteam なら、移す費用は主に YAML の選択肢を覚えることに費やされ、文法そのものは難しくない。

きれいな文書の site だけが欲しく、頁に動かす必要のあるコードが 1 つも無いなら、Quarto が持ち込む設定の負担は余計に見える。もっと軽い静的な仕組みで足りる。また PDF の道は今も LaTeX の環境に頼り、その誤りの知らせは初心者に優しくない。Typst の形式へ変えればこの層を回り込めるが、Typst の周辺はまだ若い。描画の時間も考える必要があり、計算の重い企画は凍結と控えを設定しないと、作り直すたびに同じ計算をやり直すことになる。

1.11 の更新を見ると、Quarto の重心は機能を積むことから信頼を磨くことへ移っている。証明書の連鎖、アクセシビリティ、言語をまたぐ engine の控えの問題は、いずれも長く使う人だけがぶつかる痛みだ。すでに使っている人にとって更新の理由は安全の修正であり、様子を見ている人にとっては、普段書いている報告を 1 つ試しに描いて、原稿 1 つが今の寄せ集めの流れを置き換えられるかを見る価値がある。

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対応OS: Windows macOS Linux