Go で書き直されたターミナルのエージェント、Antigravity CLI は無料枠でも動く
要約
コンパイル済みの Go バイナリ一本が Node 時代の入口を置き換え、デスクトップ版と核も設定も共有する。サブエージェントは並列で働き、OS のサンドボックスの中に閉じ込められる。
おすすめ- ソフト名
- Antigravity CLI
- バージョン
- 1.2.3
- オープンソース
- 非オープンソース
- OS
- WindowsmacOSLinux
- 更新日時
- 2026-10-29 22:00
Google はターミナルの中の AI エージェントを一から書き直した。Go のバイナリ一本、打つのは「agy」だけだ。
ターミナルでモデルと並んでコードを書くこと自体は新しい話ではないが、Google はそこへの入り方を変えた。2026 年 5 月の開発者会議で、同社は散らばっていた開発者向けの道具をひとつのブランドの下にまとめ、Antigravity CLI はそのうちターミナル型の部分になる。公式発表によれば、個人の無料利用者と上位二段階の購読者に提供されてきた旧コマンドラインサービスは 2026 年 6 月中旬に停止した。以後、シェルから同社のエージェントに届く道は、この新しい「agy」の入口だけである。
これは古いプロジェクトに新しい名前を着せたものではない。走らせてみれば、別種の道具だと分かる。
Go のバイナリ一本、実行環境を先に用意しなくていい
前の世代は Node のプロジェクトで、動かす前にまず実行環境が存在している必要があった。Antigravity CLI が届けるのはコンパイル済みの単一 Go 実行ファイルで、パッケージ管理者と格闘する必要も、そのために別の言語実行環境を用意する必要もない。直接の利点は起動の速さと依存の少なさだ。
初回の実行では Google アカウントでのサインインを求められ、認証情報はシステムのキーチェーンに入る。つまり三つのプラットフォームそれぞれの資格情報管理の仕組みだ。遠隔の SSH セッションには開くブラウザがないので、認可リンクを出力し、手元のマシンのブラウザでサインインを済ませ、コードを貼り戻す。公式ドキュメントはこの流れを正規の経路として扱っている。
エージェントの核はひとつ、デスクトップ版と共有
Antigravity にはいま四つの顔がある。デスクトップアプリ、このコマンドラインの道具、プログラムから呼ぶための SDK、そして IDE。公式ブログははっきり書いている。CLI とデスクトップ版は同じ agent harness の上で動き、設定も共有する。実務的には、片方で整えた権限ルールがもう片方でそのまま効くということで、二つの許可リストを抱える人はいない。

そこから導かれるのは、改善が一度で全部に届くということだ。核の中の道具の振り分けや計画の論理が上がれば、二つの画面が同じ日に受け取る。移植待ちの版は生まれない。セッションは既定では共有されないが、ターミナルで開いたセッションはデスクトップ版へ引き上げて続きを話せる。
主導のエージェントが先頭に立ち、サブエージェントが並行して働く
ここが初期のコマンドラインエージェントともっとも違う点だ。公式ドキュメントはマルチスレッドの非同期アーキテクチャだと説明する。時間のかかるビルド、広範囲のコード検索、複数ファイルにまたがる変更は、ターミナルを塞いで待たせるのではなく、並行するサブエージェントや背後で走るタスクに振り分けられる。こちらはコードを書き続けても、質問を投げても、ファイルを見て回ってもいい。背後のスレッドが自分で検証を回す。
これらのサブエージェントは「/agents」パネルで管理する。一覧には識別子、役割、状態、いま実行している段階が並び、一段下れば完全な推論の記録も読める。道具に承認が要るときはステータス行が点滅して知らせる。ひとつのショートカットは今の会話から承認待ちの次のサブエージェントの詳細へ直接飛び、もうひとつは画面を離れずにその場で通す。コードレビューや継続的インテグレーションのような固定の持ち場向けに、専用のエージェントを自分で定義することもできる。

付属のスラッシュコマンドは、どこまで任せるかという問いを軸に組まれている。ひとつは手放しの段階だ。目標を渡せば、エージェントが自分で分解し、自分の実施計画を承認し、達成するまで走る。もうひとつは向きを逆にして、要件が固まるまでエージェント側から質問させる。境界がぼやけている案件や、取り返しのつかない操作に向く。三つ目は予定を扱い、一度きりの遅延にも、繰り返しの周期にもできる。たとえば一時間ごとにビルドが通るかどうかを見に行く、といった使い方だ。

ターミナルのサンドボックス。動く前に鍵をかける
AI に自分のマシンでコマンドを走らせる以上、どこかにブレーキが要る。ここのサンドボックスは、OS がもともと備えている隔離の仕組みを借りる。仮想マシンやコンテナの層を余分に一走りさせる費用を省けるので、起動はほとんど意識に上らない。
具体的には、どのプラットフォームも自前の機構を出す。macOS ではサンドボックスの仕組み、Linux では jail、Windows では AppContainer。設定で有効にすると、エージェントが実行するコマンドは隔離された環境の中に限定され、実際のファイルシステムとは切り離される。
道具の権限は段階を選べる。既定の段階は、システムやプロジェクトのファイルに影響する操作の前に必ず止まって尋ね、ついでにそのコマンドを今後ずっと許可する形で記録もできる。より慎重な段階は読み取り専用の道具だけを解放する。次の段階は自動実行を許すが、あくまでサンドボックスの中だけ。最後の段階はすべてを通し、版管理下にあるリポジトリでの使用に向く。ワークスペースも別に信頼の確認が要り、あるディレクトリに初めて入るときにそれが問われる。
無料でも動くが、枠は把握しておく
個人利用はゼロから始まる。無料の段階は期間限定の試用ではなく、長期にわたって置かれる基本の枠で、機能を削られてはいない。核となるモデルはどれも使える。その上に二段階の購読があり、枠が広がり、最上位は外部のモデルも呼べる。まず試してみるのに費用はかからない。
先に言っておくべきことがひとつある。無料の枠は周期で更新され、具体的な数字についての公式の言い方は最後まで曖昧で、余剰の計算資源がある範囲という表現にとどまる。この段階が永久に続くという約束もない。サブエージェントが並行すると枠を同時に削り、漠然とした目標ひとつで十数回のモデル呼び出しが起きうるので、思ったより早く減る。日常の道具にするなら、まず自分の消費のリズムを掴んでおくべきだ。
古い入口からの引っ越し
既存の利用者はゼロから始めなくていい。取り込みの機能が内蔵されていて、前の世代の拡張はここのプラグインに変換され、スキル、MCP サーバー、フックの多くは持ち込める。版の情報は変更履歴のコマンドにあり、コマンド一覧はヘルプのコマンド一発で出る。つまずきやすいのは二箇所。ワークスペースのスキルは新しいディレクトリへ移す必要があり、移さないと表示されない。しかもエラーも出ない。コンテキストのファイルは楽で、これまでのものがそのまま効く。
念のため書いておくと、これは版の更新ではなく移行だ。バイナリが変わり、認証の方法が変わり、プラグインの仕組みが変わった。旧コマンドラインの入口を呼んでいるスクリプトやパイプラインがあるなら、その部分は手作業で洗い直すことになる。
加えて、この道具は現時点でソース非公開で、外に出ているのは説明資料と更新履歴だけだ。それが置き換えたオープンソースのプロジェクトとは違う点であり、気にするなら先に知っておいたほうがいい。
Antigravity CLI が解こうとしているのは、コードを書かせることではなく、ターミナルの中で流れを自分で組ませることだ。Go のバイナリ一本が環境の負担を消し、核の共有がデスクトップ版との足並みを揃え、サブエージェントの並行とターミナルのサンドボックスが、手放すことと取り戻すことの両方を表に出す。無料の枠で足りるかどうかは、どれだけ大きな仕事を渡すかで決まる。実際のプロジェクトをひとつ走らせるほうが、どんなレビューより雄弁だ。